2024/11/20
当社で鋳造されるロストワックス精密鋳造品の多くは、マシニングや工具といった産業機器や船舶や航空機といった輸送機器などで使用される部品が大半となりますが、今回は工芸品分野のお客様をご紹介いたします。
美術家・鋳金作家 佐治 真理子 様
東京藝術大学大学院にて鋳金専攻を修了された後、芸術大学にて講師としてご活躍される傍ら鋳金彫刻作品、茶道具、金属造形物の製作・展覧会への出展をされております。また、鋳造の柔らかい肌合い、一点ものの高級感という特徴を生かし、マンション等に設置される文字やオブジェを制作するエクステリア製作工房「いもの文字屋」や工芸工房とカフェの複合施設「コの字カフェ・製作所」の主宰者としても精力的に活動されております。
ホテルオブジェ デザインピクトサイン 人型作品
ホームページ:https://www.m-saji.net/
インスタグラム:https://www.instagram.com/saji____m/
当社では主にステンレス製茶釜の鋳造にて協力をさせていただいております。佐治さんの茶釜製作は大学在学時代に茶道を習っていたことがきっかけで始められたとのこと。茶釜と言えば銑鉄(鉄鉱石から製錬された鉄)で作られるのが一般的ですが、佐治さんはステンレス(銑鉄に添加物を加え錆びにくくした金属)での茶釜製作で、歴史のある茶釜に技術を学びつつ伝統に一石を投じる挑戦をされております。佐治さんは通常の作品は鋳造まで全ての工程をご自身の工房にて行われていますが、ステンレスは融点が高いため当社にて佐治さんの作られたワックス型から鋳型を作成し、鋳造までのご協力をさせていただいております。
ステンレス茶釜完成品
佐治さんにより鋳肌(鋳造したての肌)の質感を生かす細やかな研磨が施されています
錆びにくい金属なので、鉄釜のように漆などの塗装の必要がなく、金属素材そのままの銀色を生かした作品になっています。
こちらの茶釜、色や造型の珍しさを評価された茶道の先生や、海外展開をされているお抹茶屋さんへの販売が主となっておりますが、ステンレスのお手入れが容易という特性を生かし手軽に抹茶を楽しめるという形でも売り出していきたいとのことです。
本ブログの文頭にて、当社のロストワックス精密鋳造品の用途は機械部品が大半と書かせていただきましたが、鋳造の歴史を紐解くと奈良の大仏に代表される大仏像や釣鐘といった宗教関連の物や茶釜などの工芸品を鋳込むことにより発展を遂げており、茶釜の鋳造はまさに鋳造の原点と言える仕事です。このようなお仕事に関われることは鋳造業者として大変嬉しいことです。また、より作者の想いを再現できる鋳物を製作できるよう精進して参る次第です。
当社では機械部品の他にもロストワックス精密鋳造の設計の自由度や鋳物の質感を生かした工芸品、調理器具、金属洋食器などの製造も得意としておりますので、ご興味を持たれましたら是非一度ご相談ください。
<お問い合わせ先>
株式会社カトメ 小須戸工場・営業本部
TEL:0250-38-5377
FAX:0250-38-4755